近年日本で発生する災害のなかで、救助に尽力している災害救助犬と呼ばれるワンちゃんたちをご存じですか?
今回は災害救助犬とはなにか、なれる犬種や仕事内容、日本の現状や課題について解説します。
災害救助犬について今まで詳しく知らなかった方も、災害救助犬についての知識を深めていきましょう!
目次
◆災害救助犬とは
災害救助犬とはレスキュードッグとも呼ばれ、文字通り災害が起こった際に人命を救助するために訓練された犬です。
近年日本では地震や台風、土砂災害など、さまざまな自然による災害が起こっています。
建物の下敷きなどにより行方不明になってしまった被災者を捜索する際に、災害救助犬は活躍します。
捜索というと警察犬を想像する方も多いでしょう。
しかし警察犬が特定の臭いを追って探知するのに対し、災害救助犬は生存していて身動きが取れない人が放つ臭いを空気中でキャッチして捜索します。
一人だけでなく不特定多数の人間の捜索ができるので、倒壊した建物のガレキの中から行方不明者を探すことができるのです。
◆災害救助犬の主な犬種
災害救助犬はどんな犬種が多いのでしょうか。
災害救助犬になるのに必要な条件や、代表的な犬種についてみていきましょう。
災害救助犬はどんな犬種でもなれる
じつは災害救助犬に犬種の規定はなく、どんな犬種でもなれます。
- 人や動物に対して攻撃性がない
- 優れた嗅覚を持っている
- 体力がある
- 大きな音や変わった環境にも動じない心を持つ
主に上記の条件を持ち、訓練を経て試験に合格すれば災害救助犬として認定されます。
また災害が起こった環境を考えて、海外では極寒の山岳地方で遭難が起これば深い雪の中を進む体力のあるセントバーナード、海での救助には泳ぎの得意なニューファンドランドなど、条件に合った災害救助犬が派遣されます。
犬種に規定がないことからさまざまな種類の災害救助犬が存在しますが、以下4種類の代表的な災害救助犬を紹介します。
【ジャーマン・シェパード・ドッグ】
警察犬でもおなじみのジャーマン・シェパード・ドッグは以下の特徴を持ち合わせ、災害救助犬としても活躍しています。
- 強いリーダーシップがある
- 指示を守り抜く強い忠誠心をもつ
- 訓練に耐えられる忍耐力がある
災害時も慌てることなく、ハンドラーと呼ばれる指示者の言葉を理解し忠実に捜索ができる頼もしい災害救助犬です。
【ラブラドールレトリバー】
シェパードと同じく警察犬や盲導犬としてのイメージもあるラブラドールレトリバーは、以下の特徴から災害救助犬に向いているといえます。
- 知能が高いので訓練が入りやすい
- 性格は穏やかだが好奇心が旺盛
- 被災者に寄り添える優しさを併せ持つ
ただ救助をおこなうだけでなく人の心に寄り添える優しさを持つラブラドールレトリバーは、被災者を癒やしてくれるでしょう。
【ゴールデンレトリバー】
上記で紹介した2犬種と同様にゴールデンレトリバーも、警察犬や盲導犬として働くほか、以下の特徴からも災害救助犬に向いています。
- 賢く友好的な性格である
- 忍耐力に優れ訓練が入りやすい
- 明るい性格で被災者を支えてくれる
人が大好きでややお茶目な性格をしていることが多いゴールデンレトリバーは、被災者の心の中に入りこみ、明るい表情で心を救ってくれるでしょう。
【柴犬】
昔から番犬や猟犬として人間との生活を共にする柴犬も、以下の特徴から災害救助犬に向いているといえます。
- 指示に従順で忠実である
- 勇敢な性格を持っている
- 知性があり忍耐力も兼ね備えている
比較的小柄なため狭い場所にも入ることができる柴犬は、さまざまな場所で起こる災害で活躍しています。
◆災害救助犬の仕事内容
具体的な災害救助犬の仕事内容としては、以下のものがあります。
- 倒壊した建物のガレキに下敷きになっている人の救助をする
- 山で遭難した行方不明者を捜索する
- 水難事故で溺れた人の救助や行方不明者の捜索をする
ワンちゃんは嗅覚が優れているため、重いガレキを退かすことなく臭いを嗅ぎ分けて行方不明者の捜索ができます。
また捜索だけでなく、水難事故で溺れた人の元へ泳いでいって救命胴衣や浮き輪を渡したり、服を噛んで陸まで連れて行くなどの救助も行い、自らの命をかけて人命を救ってくれます。
◆災害救助犬になるにはさまざまな訓練が必要
災害救助犬になるには以下のようにさまざまな訓練が必要です。
- 信頼関係を築くスキンシップ訓練
- 指示者に従う服従訓練
- 特殊な現場での捜索も可能にする環境訓練
- 生存者の発見を知らせるための救助訓練
一例ですが、上記の訓練を受けた後、試験を受け合格すれば災害救助犬として認定されます。 その後も定期的に訓練を受けることで常に災害救助犬としての能力を維持できるのです。
◆日本での災害救助犬の現状と課題
日本での災害救助犬の現状は欧米などと比べ後進的で、育成や災害発生時の初動が遅い印象が拭えません。
そもそも災害救助犬はスイスのアルプス地方で飼育されていたセントバーナードが遭難者を救助したことが始まりとされ、日本では1990年にジャパンケネルクラブが事業を開始しました。
現在は41の災害救助犬組織や団体が作られており、消防庁や自治体などと連携し災害発生時に救助犬の派遣や捜索をおこなっています。
しかし災害救助犬の認知度は低く、災害発生から早い段階で災害救助犬の派遣が行われずに十分に力を発揮できないことがあります。
また41もの団体があるにもかかわらず認定試験が組織や団体それぞれの規格によるなど統一されていないので、指示を出すハンドラーや災害救助犬の能力にもバラつきが見られるのが現状です。
災害救助犬に対する認知度を広め、各組織が連携し協力して人命の救助をおこなうことが現状の課題といえます。
◆まとめ
今回は災害救助犬についての犬種や仕事内容、なるための訓練や現状と課題について紹介しました。
海外を発祥とした災害救助犬は日本ではまだ歴史が浅く馴染みの薄いものですが、頻繁に起こる地震や災害での行方不明者の捜索や救助など、求められ活躍できる場は広がっています。
命をかけて働いてくれているワンちゃんがいるのだと知り、一人ひとりが災害救助犬についての必要性と知識を広めていくことで、統一した育成や能力の向上が期待できるのではないでしょうか。