動物福祉や保護活動について、ワンちゃんやネコちゃんを飼っている飼い主さんであれば一度は耳にし、考えたことのある問題ではないでしょうか。
現在日本での殺処分数は以前と比べて減少傾向ではあるものの、未だ無くなるには至っていません。
今回は改めて動物福祉や保護活動はどういった考え方や活動を指すのか、日本の現状や課題、私たちにできることについて考えていきたいと思います。
重い言葉ではありますが現状や課題を知り、解決方法を考えることで家族であるワンちゃんやネコちゃんのことを改めて考えるきっかけとなりますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
目次
◆動物福祉・保護活動とは
動物福祉とはアニマルウェアとも呼ばれ、ひとことで言うと「動物がストレスを感じずに健康で幸福な生き方ができる飼育をしていこう」という考え方です。
人間が動物の命を尊重せず、気持ちを無視して気の向いたときだけ可愛がったり世話をしたりすることは、動物福祉が満たされていない行動といえます。
動物と共に暮らしている方であれば分かるとおり、動物も人間と同じように命があり、感情がありますよね。
動物を快適な環境のなかで飼育し、できる限りストレスを取り除き満たされた生活を共にする考え方が動物福祉です。
動物福祉の根幹にある考え方として、「5つの自由」があります。
- 飢えや渇きからの自由:種類や年齢、健康状態に合ったフードや水を与えよう
- 不快からの自由:清潔で安全、安心できる環境を準備しよう
- 痛みや外傷、病気からの自由:ケガや病気の適切な治療や健康チェックをおこなおう
- 本来の行動をする自由:本能や習性に合う生活スペースを用意しよう
- 恐怖や苦痛からの自由:動物が恐怖や痛みを感じないために的確な対応をとろう
現在上記の「5つの自由の考え」に賛同し、捨てられた動物の保護活動をおこなう団体が多く存在しています。
以下に動物保護団体がおこなっている主な活動内容を挙げました。
- 捨てられたペットの引き取り
- 健康状態のチェックや動物病院による治療
- 人間との信頼関係の構築
- 里親の募集と引き渡し
- 活動周知のためのセミナー など
動物の保護活動は動物が好きで可愛いと思うだけでなく、動物の目線になり幸せのために行動する力が必要です。
◆日本の動物福祉の現状
日本の動物福祉における現状は、ドイツやイギリスなどの動物保護先進国に比べて遅れています。
たとえばイギリスでは動物に関する法律の整備がされていて、ライセンスを持っていないペットショップは生体販売ができません。
ドイツでは保護した動物の殺処分が法律で禁止されていて、やむをえず行き場のなくした動物に対しては民間の保護施設が引き取りや譲渡をおこない、譲渡率は9割を超えています。
では日本はというと、法律の面では動物愛護法とペットフード安全法の法律が制定されているものの、引き取り手のない動物に対しての最終的な選択として殺処分がおこなわれているのが現状です。
環境省が発表している犬・猫の引き取り及び処分の状況の統計資料によると、令和元年度の犬の殺処分数は5,635頭、猫の殺処分数は27,108頭となっています。
10数年前と比較すると10分の1と大幅に減少しましたが、それでも引き取り数の約40%は殺処分を選択しなければならず、毎年ワンちゃんやネコちゃんが救われることなく命を失っているのです。
◆殺処分数減少の理由と無くならない原因
日本の犬猫の殺処分数が大きく減少した理由としては、動物愛護法の改正や保護団体の活動によるものが考えられます。
ここからは殺処分減少の理由と、殺処分が無くならない原因について見ていきましょう。
◆殺処分数減少の理由
殺処分数減少の理由
殺処分数減少の理由として、以下の2つが挙げられます。
- 動物愛護法の改正
- 保護団体の活動
順番に見ていきます。
1.動物愛護法の改正
動物愛護法は動物をペットとして飼育する場合、適切な環境化でおこなわなければならないという法律です。
動物愛護法は幾度かの改正を経て、2020年の時点では99条もの規定がなされています。 努力義務ではあるもののマイクロチップの装着や、相当な理由がなければ自治体は動物の引き取りを拒否できる点は引き取り数減少に直結し、殺処分数減少に大きく寄与しています。
2.保護団体の活動
動物保護団体などによる活動の活発化も、殺処分減少の原因のひとつとなっています。
- セミナーなどで保護の現状や殺処分の問題提起
- 引き取られた動物の世話や治療
- 人間恐怖症改善や環境に慣れさせるしつけ
- 積極的な譲渡会の開催
上記の活動は新たな飼い主を見つける一歩となり、殺処分減少に繋がります。
◆殺処分が無くならない原因
上記の背景により減少の傾向がある日本の犬猫の殺処分数ですが、未だ無くならない原因は身勝手な人間の行動が挙げられます。
- 飼い主が高齢になり飼育ができなくなった
- 引っ越し先がペット可物件でない
- 職を失い飼育費用が負担できない
- 避妊去勢手術をおこなわず増えすぎてしまい飼育不能 など
上記は一例ですが、法の整備がされつつあり保護活動が活発になったとしても、人間の身勝手な理由により捨てられる動物は数多くいます。
保健所や愛護団体も持ち込まれるすべての犬や猫を引き取り、最期まで飼育することはできません。
動物同士の病気の感染やケンカによるケガのリスクもあることから、引き取り手の見つかりにくい高齢の動物や病気を抱えている動物から処分されてしまうのが現状です。
さらに近年の新型コロナウイルス感染症は以下の影響をもたらしています。
- 感染拡大防止のため譲渡会の延期や中止
- 動物愛護週間などの行事の中止
- コロナ禍でのペット飼育数の増加
譲渡会の延期や中止により動物が引き取られる機会が減り、行事の中止により殺処分の現状が世間に伝わりにくくなっています。
また在宅時間が増えたことでペットの需要が高まる一方で、新型コロナウイルスが落ち着いた頃に飼育放棄などの問題が出てくる可能性があり、殺処分数増加に危機感を抱かねばなりません。
◆動物福祉・保護活動の課題
動物福祉や保護活動の課題は、引き取られるペット数の減少と、譲渡活動の活発化です。
最初から手放す目的で動物を飼育する方はいないと思いますが、上記で見てきたようにさまざまな理由で人々はペットと一緒に暮らさない選択をします。
- 世話をするための毎月の出費
- 動物病院にかかるための費用
- 現段階での将来設計
- もし自分になにかあったときの引き取り先
飼う際には上記の項目をしっかりと考えましょう。
とくに高齢の飼い主の場合、健康上の理由で手放さなければならなくなった時に周囲の人に引き取ってもらえるかは確認しておくべきだと考えます。
計画性のある飼育で自治体や愛護団体に引き取られるペットの数が減れば、必然的に殺処分数も減少します。
殺処分数を完全にゼロにすることは法律で禁止しない限り難しく、殺処分がなくなることで適切な飼育下で管理されない動物も増えて、また別の問題が出てきてしまいます。
やむなく持ち込まれた動物が殺処分されずに済むためには、譲渡活動も活発に行っていかなければなりません。
◆私たちにできること
動物の殺処分数を減らし、人間とワンちゃんやネコちゃんが共に安心して暮らせる社会をつくるために、私たちにできることは以下の2つがあります。
- 動物福祉や保護活動を知り理解する
- できる範囲での協力をする
順番に見ていきましょう。
1.動物福祉や保護活動を知り理解する
まずは動物福祉や保護活動とはなにかを知り、理解することから始めましょう。
愛護団体や自治体がどういったことを目的に、どのような活動をおこなっているかを知ることで、殺処分の現状や保護活動を続けていくことへの難しさなどの理解できます。
今後自分でペットを飼育するときに、たとえば譲渡犬を飼育するなど選択肢もひろがります。
まず知り、理解することが問題解決への第一歩となります。
2.できる範囲での協力をする
理解したあとは自分のできる範囲で協力しましょう。
- ボランティアなどで活動にかかわる
- 支援金などを送る
引き取った動物の世話や譲渡会のスタッフなど、ボランティアを必要とする団体は数多くあるので実際にかかわったり、活動への支援金を送ったりといった協力ができます。
人員不足や資金不足が少しでも解消され、不幸な動物を減らせるようできることからはじめていきましょう。
◆まとめ
今回は動物福祉や保護活動とはなにか、現状や課題、私たちにできることをまとめました。
日本の動物福祉の現状を知り課題を考えることで、きっと行動が変わってくると思います。
自分にできる範囲で理解し協力することで殺処分数の減少が望め、動物の命を救う一歩となるでしょう。